「カラマーゾフの兄弟」は、令和の今、読んでも、かなり面白いストーリーなのですが、
なぜか、途中で挫折することが多い、という話も、チラホラ。
特に、内容が難しくも、読みにくかった記憶も無いので、不思議に思っていたところ、
「もしかすると、古典だからといって、岩波文庫版 を、選んでる人が多いのでは…」 と、
思いいたり、もったいないので、この記事を作ってみました。
ちなみに、1ページ目の冒頭だけでも、翻訳は、これだけ違います。
カラマーゾフの兄弟 1 (岩波文庫) 米川正夫 訳
第一扁 ある一家族の歴史
第一 フョードル・カラマーゾフ
アレクセイ・カラマーゾフは、本郡の地主フョードル・パーヴロヴィッチ・カラマーゾフの三番目の息子である。このフョードルは今から十三年前に奇怪な悲劇的な死を遂げたため、一時(いや、今でもやはり町でときどき噂が出る)なかなか有名な男であった。しかし、この事件は順序を追って後で話すこととして、今は単にこの『地主』が(この地方では彼のことをこう呼んでいた。そのくせ、一生涯ほとんど自分の領地で暮したことはないのだ)、かなりちょいちょい見受けることもあるけれど、ずいぶん風変りなタイプの人間である、というだけにとどめておこう。つまりただやくざで放埓なばかりでなく、それと同時にわけのわからないタイプの人間なのである。とはいえ、同じわけのわからない人間の中でも、自分の領地に関する細々とした事務を、巧みに処理して行く才能を持った仲間なのである。しかし、それよりほかに芸はないらしい。
カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫) 亀山郁夫 訳
第1部 第1編 ある家族の物語
1 フョードル・パーヴロヴィチ・カラマーゾフ
アレクセイ・カラマーゾフは、この郡の地主フョードル・カラマーゾフの三男として生まれた。父親のフョードルは、今からちょうど十三年前に悲劇的な謎の死をとげ、当時はかなり名の知られた人物だった(いや、今でも人々の噂にのぼることがある)。しかし、そのいきさつについてはいずれきちんとしたところでお話しすることにし、今はとりあえずこの「地主」(彼は生涯、自分の領地にはまったくといってよいほど、居つかなかったが、このあたりではそう呼ばれていた)について、こう述べるにとどめよう。
つまり、一風変わった、ただしあちこちで頻繁に出くわすタイプ、ろくでもない女たらしであるばかりか分別がないタイプ、といって財産上のこまごまとした問題だけはじつに手際よく処理する能力に長け、それ以外に能がなさそうな男だと–。
カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫) 原卓也 訳
第一編 ある家族の歴史
一 フョードル・パーヴロウィチ・カラマーゾフ
アレクセイ・フョードロウィチ・カラマーゾフは、今からちょうど十三年前、悲劇的な謎の死をとげて当時たいそう有名になった(いや、今でもまだ人々の口にのぼる)この郡の地主、フョードル・パーヴロウィチ・カラマーゾフの三男であった。この悲劇的な死に関しては、いずれしかるべき個所でお話しすることにする。今はこの<<地主>>について(生涯ほとんど自分の領地で暮したことがなかったのに、彼はこの辺では地主と呼ばれていた)、彼が奇妙な、そのくせかなりしばしば出くわすタイプ、つまり、およそ俗物で女にだらしがないばかりか、同時に常識はずれの、ただ常識はずれと言っても自分の財産上の問題を処理するうえでは大いにやり手で、それだけしか能がないといった感じのするタイプの人間だった、と言うだけにとどめておこう。
そして、古典や名作は、文庫本で読む人が多いと思いますが、文庫本はサイズが小さいので、
文字の大きさや、文字フォントも、読みやすさに、大きな影響を与えるはず。
その比較が、こちら。

岩波文庫 43文字 x 19行 カラマーゾフの兄弟 米川正夫 訳

光文社古典新訳文庫 38文字 x 16行 カラマーゾフの兄弟 亀山郁夫 訳

新潮文庫 カラマーゾフの兄弟 37文字 x 16行 原卓也 訳

新潮文庫 カラマーゾフの兄弟 37文字 x 16行 原卓也 訳
文章
文字の大きさ・読みやすさ
オススメ度
発売が、68年前なので、古典にふさわしい古めかしさだが、
お世辞にも読みやすいとはいえず、
読むなら、他の出版社の文庫版を、読んでからにすべき。
改善もせず、体裁が旧態依然なのは、出版社の怠慢。 古典嫌いを増やしてる一因では?
文章
文字の大きさ・読みやすさ
オススメ度
文章がこなれているのと、段落分けが多く、視覚的にも読みやすい。
ただ、文字が大きい分、頭に入ってこない印象もあり。
kindleなどの電子書籍版なら、文字サイズを変えられるので、このあたりは好み。
文章
文字の大きさ・読みやすさ
オススメ度
個人的には、もっとも好みだが、光文社古典新訳文庫と比べ、段落分けが少なく、
1ページまるまる、文章が正方形?で、並んでいることも有り。
文字の大きさは、光文社と、ほぼ同じだが、
ページの上の余白がすこし狭い分、こちらのほうが、文章が、目に入りやすい。